肛門疾患について

肛門疾患について


① 病状

肛門の症状には、

出血・痛み・かゆみ・腫瘤触知・便失禁・肛門の違和感・何かがはさまっている感じ・直腸脱出などがあります。

病名としては以下のものがあります。

痔核(いぼ痔)

これは血管の病気です。

肛門周囲は静脈(血管)が網の目のようにはりめくらされています。

便秘・下痢・出産などで肛門に力みが加わると、血液がうっ血(溜まってしまうこと)して、

静脈血管が拡張し、静脈瘤という瘤(こぶ)を作ってしまいます。

これが痔核(いぼ痔)です。したがってこれは血管の病気なのです。

痔核(いぼ痔)には肛門の中の方に出来る内痔核と肛門縁に出来る外痔核があります。

内痔核は排便などで傷つくと出血します。便器が真っ赤になるものから紙に付く程度まで様々です。

坐薬を使用すれば症状は軽減します。

しかし痔核が大きくなり、出血が続く場合や、排便の度に痔核が肛門外に脱出する場合は手術が必要になります。

外痔核は血管内に血栓が形成されて、急に腫脹(腫れること)して、痛みがあります。

椅子に坐れないほど痛むことがあります。

暖めて(風呂などで)軟膏を塗れば、4日から14日くらいで治癒します。手術適応はありません。

しかし肛門部の襞状の隆起が残ります。

痔ろう

これは感染症です。

肛門部の細菌が肛門陰かという肛門皮膚と直腸粘膜部の間の窪地に感染し、

直腸の粘膜近傍に膿瘍を形成いたします(原発巣)。

その後肛門近傍の皮下に膿瘍を形成します。肛門周囲膿瘍と言い、傷みが強く、時に熱発も認めます。

外来で切開し排膿すれば楽になります。

その後肛門陰かと皮膚の間にトンネルが形成され、排膿が続き治りにくい管となったものが痔ろうです。

10年以上も放置すると痔ろう癌の発生の可能性もありますし、

ありの巣のようにトンネルが複雑になり、手術が困難になることもあります。

早めに手術を施行し、この感染したトンネル部を切除することが必要です。

痔裂(裂肛)

これは外傷によるものです。

肛門の皮膚は肛門菅という2cm程度の管を形成して直腸粘膜に移行します。

この肛門菅の皮膚が、硬い便などで裂けることがあります。

この外傷が何度も繰り返されると難治性の潰瘍やポリープ状の肉芽ができて、

排便時に大変な痛みを伴うようになります。

肛門の後方にできることが多く、排便困難になり大変苦しいものです。

潰瘍切除、皮膚移植、肛門括約筋切離などの手術的処置が必要です。

直腸脱

弛緩性便秘といいますが大腸の蠕動運動が減弱し、腸壁の緊張が低下して、腸内容の輸送が遅延している方で、

さらに肛門括約筋の機能が低下した場合、排便時に直腸壁が脱出してくることがあります。

この状態を直腸脱言います。まずは投薬によって便通を改善することが大事です。

絶えず腸間が脱出しているようであれば、手術が必要です。

肛門皮膚炎

便失禁などで肛門の皮膚に便が付着しつづけると、皮膚炎を起こすことがあります。

症状としてはかゆみが主ですが、ビランを呈するようになると痛みやしみるという症状も出てきます。

局所を清潔にしてステロイドのクリームを塗布することが必要になります。

肛門癌・直腸癌

肛門菅の皮膚に発生する癌です。直腸癌同様、肛門疾患を診察する際、

いつも念頭においておかなければならない病気です。

組織をとって顕微鏡で調べることが必要です。治療は手術です。

その他特殊な肛門皮膚病や真菌症(カビ)があります。

肛門疾患の約5%を占めていて、正確な数字はわかりませんがその半分くらいは性感染症(STD)のようです。

② 日常の注意事項

肛門を清潔に・・・

肛門は絶えず清潔に保つことが大事です。入浴も有効です。

便秘や下痢は大敵です・・・

便秘は痔の最大の敵です。

習慣性便秘、排便困難症とも言いますが、これは便意を我慢してしまうことを習慣にしていると、

直腸に便が溜まっても排便感を感じなくなってしまう状態を言います。

日常見られる便秘の多くを占めています。

朝、食後には必ずトイレに行く、便意を感じたら必ずトイレに行くという習慣をつけることが大事です。

規則正しい日常生活を・・・

毎日規則正しい時間に食事をとるようにし、生野菜、繊維の多い食事をとり、

水分も多めに摂取するようにしてください。

十分な睡眠時間をとることも大事です。

PAGE TOP